シ-ツ

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感想: ジェームズ・クリアー式 複利で伸びる1つの習慣

ジェームズ・クリアー式 複利で伸びる1つの習慣

Audibleにあったので2巡。Audibleだと移動中も聞き続けられてとても良いが、Audibleだけだと振り返りがとても大変だった。

複利で伸びる1つの習慣」とあるため「小さい進歩をやり続ければ大きくなるよ」的な話だけかと読む前は思ったが、実際に読んで見るとそもそも習慣を続けるための話が多く、良い本だった。

アイデンティティと習慣の関係やそれに基づいた考え方に関する話は新鮮味があった。

細かいHowToのあたりでは、意外と元々やっていたことがそこそこあり真新しさはそこまで無いように感じた。 自分にとってはなにか習慣を始めるときは、平日・休日の時間割を作ってみたり、togglで記録するのが調子が良さそう。

この本にもあるけれど、自分の実際の習慣をちゃんと記録して評価するのが一番大事そうだ…

感想: コーヒーの科学

コーヒーの科学

古本屋で見つけたので購入。amazonのレビュー数とかを見る感じ著名な本っぽい。

2016年出版なのでそこまで古い感じもなさそう。

コーヒーの果実の構造から始まり、精製手法、コーヒーノキ自体、歴史、味や香りの表現、味や香りを生み出す成分、焙煎・抽出時に起こる事象などについて解説されている。

コーヒーをどうやったら美味しく淹れられる方法ではなくコーヒー自体に詳しくなるための本という感じ。(タイトルの通り)

個人的には、精製手法・歴史・成分・焙煎抽出時に起こる事象についての解説が好きだった。

自分は浸漬法に分類されるクレバーコーヒードリッパーをよく使っている。「浸漬法のほうが味が安定する」という説明を見て、「だったらわざわざ透過法をやる必要ないな」と思っていたし、安定することが良いことに思えて浸漬法のほうが後に生み出されたのかなとぼんやり思っていた。*1 だが歴史的には、より良い味を求めて透過法が後に生み出されたと知り意外だった。

また、浸漬法と比べてお湯と触れている時間が短い透過法でもちゃんと味が出せるのが不思議だったが、この本では単純化した理論モデルで解説してくれて納得感があった。

コーヒーについてWebで調べると「透過法は浸透圧によってコーヒーの成分が粉から水に移動する」といったような説明を見ることもあるので*2、こういったちゃんと説明してくれる本は貴重だと感じる。

著者の方が運営しているサイトも後で読んで見る。

*1:少し考えるだけで、浸漬法のほうが道具や技術が不要なので歴史的にも最初に試されそうだと思いつきそうなのに...

*2:浸透圧ってそういうやつだっけという

感想: Effective Kotlin

Effective Kotlin

Kotlinのドキュメントを一通り読んだあとで「で、実際にこれらはどう使うのがいいのか」を知るために購入。

「Write unit tests」など、Not Kotlin-specificのラベルが付いた章もそこそこあり、Kotlin固有じゃない部分は1/3-1/4ぐらいある。 それでも、 val var の使い分けから始まり、「Kotlinならこうできるよ」という期待通りの説明が数多くあり、満足度の高い本だった。 特にJava(JVM)との兼ね合いやKotlinの文化に関しては公式ドキュメントだけでは把握しきれないので非常に助かる。

個人的に良かったのは以下

  • 「Eliminate platform types as soon as possible」
    • Javaなど別の言語に由来してNull可能性が不明な型(Platform types)の取り扱いについて
  • 「Prefer a nullable or Result result type when the lack of a result is possible」
    • 例外・null・Resultの使い分け
  • 「Consider factory functions instead of secondary constructors」
  • 「Consider defining a DSL for complex object creation」
    • configuration-likeなDSLの定義方法
  • 「Use sealed classes and interfaces to express restricted hierarchies」
    • sealdedクラスの使い道
  • 「Consider extracting non-essential parts of your API into extensions」
    • 拡張関数の使い道
  • 「Use the inline modifier for functions with parameters of functional types」
    • inline修飾子の使い道
  • 「Prefer Sequences for big collections with more than one processing step」
    • Sequencesと他のコレクションの違い

感想: 個性という幻想

個性という幻想

全く畑違いの本として興味本位で物理本で買って読んでみたが、違い過ぎて正直読むのが大変だった。 タイトルを説明する本かなと思っていたものの、ハリー・スタック・サリヴァンの論集という毛色が強い本。

第一部の精神医学の基礎編として、口語体の講義録から始まり、第一部後半で「個性」について、「不安」について語られる。 第二部は精神医学の応用編として、プロパガンダ反ユダヤ主義、徴兵における精神医療スクリーニングの重要性などが述べられる。

読むのが難しいとは感じたが、読んでいて興味深いとも思える本だった。

この本で述べられる精神科医の患者への関わり方は精神科医じゃなくても得心がいくものであったし、本のタイトルにもなっている「個性」に関しても、人間の特性に触れながら、ヒトを人間たらしめる「文化」に満たされている(不特定多数の人間と触れている)うちに唯一無二の個性はなくなる。という話も納得感がある。

また、後半に述べられる差別と偏見、憎悪(ヘイト)に関する記述は80年前に書かれたとは思えないぐらい現代にも当てはまることを述べているように感じた。

一方で、当然ながら門外漢がこの本を単体で読んで飲み込むのはとても難しい。この本で述べられていることのうちどの部分が未だに活用される考え方で、どの部分が精神医学領域において否定されているのかがわからない。また、時代背景上触れられているプロパガンダや徴兵、戦意については現代の日本で生きているとなかなか飲み込みづらい部分じゃないかなと思う。

総じて読むのは大変だったものの良い経験だったので、また関係ない分野の本を適当に買って読んでみたい。

感想: 世界全史

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インターネットからしばらく離れる旅行に持っていく本を本屋を物色していて購入した。

世界史を全体的に浅く触れていく内容だった。 自分自身歴史に全く興味がなく、学生の頃の歴史の授業中は関係ないことをやっているタイプだったが、この本は面白く読めた。

ヨーロッパ・中国付近だけでなくイスラーム遊牧民の話も重点的に触れられていた面白かったが、日本・アフリカ・東南アジアなどの話はあまり出てこない。勉強というより娯楽目的で読むと良い本だと感じた。

(そもそもの歴史として) 大航海時代以降は「どうして…」という各国の意思決定ばかりで読んでいて心苦しい。 とはいえそのあたりの発展スピードは好きみたいなので、その部分だけ別で色々読んでみるのも良いのかも知れない。

読んでいるときの気分が完全にCivilizationだったので、旅行から帰って最初にCiv6を起動した。


この本とは全く関係ないが、旅行に一緒に持っていった「個性という幻想 (講談社学術文庫)」の栞に書いてあった「学術をポケットに」という一文に妙に心打たれた。「学術は身近にあり、誰もが簡単にアクセスできる」ことを思い出させてくれるような一文だった。 今後も時間を見つけて、仕事とは関係ない本を積極的に読んでいきたい。

感想: Spring Boot 3 プログラミング入門

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Spring Framework (Spring Boot) に関わることになったので公式のチュートリアルをやってみたのものの、全体像がなかなかつかめず理解に苦しんだので購入。*1

Spring Framework、Boot、Data、Web MVC etcがそれぞれどのような立ち位置なのかに始まり、WebアプリケーションにおけるMVCそれぞれについて広く解説してくれている。

個人的には「各テンプレートエンジンの特色と違い」「Spring Data JPAによるデータベースアクセス」「BeanとDIコンテナ」「Spring Securityによる認証」あたりが嬉しかった。

公式ドキュメントを読むだけでは「ThymeleafとMustacheはどういう基準で選択するのか」「JpaRepositoryに定義すべきメソッド名と生成されるSQLの関係」などを把握しづらかったが、この本を読むことでまずは幅広く全体像を知れたような感覚がある。

欲を言うとテストについても記述があるととても嬉しかった。

この本を読んだあとにSpring徹底入門を流し見したが、この本を先に読んだおかげで簡単に理解できた部分があるようにも感じている。 こちらは必要最低限だけの流し見にとどまってしまったので、Springを真剣に使い始めたら再度読み直したい。

*1:プログラマー脳の記述を借りると、初学者の理解プロセスが意味波(semantic wave)に従うとしたときのアンチパターンである「ローフラットライン」にあたるのかも

感想: ピープルウエア

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デッドラインと同じ感覚で読めるかと思ったが妙に長く感じた。本の長さ自体は極端に変わらないはず…。

デッドラインと異なって物語調ではなく、39章からなるTips(?)から構成される。

人材は交換可能な部品ではない、ソフトウェア開発は製造現場での考え方はなじまない、メソドロジー(方法論)は愚かであるなど、SESの現場とは真反対の考え方が並ぶ。 しかし現在のWEB系企業ならこれらを実践できているというとそうでもなさそう。主に退職に関するあたりは思うところがある。

この本では退職は明らかに無駄な出費であると述べている。退職によって無用な人材補充コストがかかり、生産性が一時的に低下し、企業が社員への投資(教育)を行わなくなる等。 特に教育に関しては(自分の数少ない企業経験上だが)納得感が強かった。自分の1社目は終身雇用の空気が比較的強く、新卒入社ということもあり手厚く教育を受けた。一方で退職も少なくはなく、また下請けの方に対して色々教えてもすぐに人が変わってしまうため「教育にかけた時間が無駄になっちゃったなぁ…」と思うこともあった。*1

2社目は3年ぐらいで人が入れ替わる小規模な会社だったため、企業としての教育自体はあまりなく、自己学習もしくは他の方から指摘されて学ぶというスタイルだった。3‐4年ぐらいで人が入れ替わってしまう業界でどれだけ教育にコストをかけられるかというのは難しい話だと思う。

そして今後自分が特に意識したいと感じたのは「変化」に関する話。

変化を自分が起こそうとしているとき、変化によって過去の知識が使えなくなる人からは反発を受け、変化によって利益を得る予定の人からは少ない支援しか得られないという。そして変化に対する反発は大抵論理的なものではなく情緒的なものであるということ。

自分が過去に(小さくても)変化を起こす側だったときを思い出すと確かにそうだったし、自分が変化を受け入れる側だったときも、変化を起こそうとしている人をちゃんと支援できていなかったと思う。*2

また、変化によって「元の状況」から「新しい状況」にまっすぐに行くのではなく、間に「混乱した状況」があり、「混乱した状況」を「新しい状況」だと誤認しない・させないこと、というのはとても納得感があった。

全体的にとても良い本であるし、エンジニアレベル・中間マネージャーレベルでも役立つ話は多いのだが、「オフィスへの投資」「組織全体の学習能力」など、今の自分じゃどうにもならないと思ってしまう部分もある。「そういやピープルウエアにはこんなこと書いてあったな」と将来の自分の引っ掛かりになってくれると嬉しい。

*1:転職している自分が言えることではないのだが

*2:セカンドペンギンとかの話がこれに当てはまりそう