シ-ツ

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感想: 個性という幻想

個性という幻想

全く畑違いの本として興味本位で物理本で買って読んでみたが、違い過ぎて正直読むのが大変だった。 タイトルを説明する本かなと思っていたものの、ハリー・スタック・サリヴァンの論集という毛色が強い本。

第一部の精神医学の基礎編として、口語体の講義録から始まり、第一部後半で「個性」について、「不安」について語られる。 第二部は精神医学の応用編として、プロパガンダ反ユダヤ主義、徴兵における精神医療スクリーニングの重要性などが述べられる。

読むのが難しいとは感じたが、読んでいて興味深いとも思える本だった。

この本で述べられる精神科医の患者への関わり方は精神科医じゃなくても得心がいくものであったし、本のタイトルにもなっている「個性」に関しても、人間の特性に触れながら、ヒトを人間たらしめる「文化」に満たされている(不特定多数の人間と触れている)うちに唯一無二の個性はなくなる。という話も納得感がある。

また、後半に述べられる差別と偏見、憎悪(ヘイト)に関する記述は80年前に書かれたとは思えないぐらい現代にも当てはまることを述べているように感じた。

一方で、当然ながら門外漢がこの本を単体で読んで飲み込むのはとても難しい。この本で述べられていることのうちどの部分が未だに活用される考え方で、どの部分が精神医学領域において否定されているのかがわからない。また、時代背景上触れられているプロパガンダや徴兵、戦意については現代の日本で生きているとなかなか飲み込みづらい部分じゃないかなと思う。

総じて読むのは大変だったものの良い経験だったので、また関係ない分野の本を適当に買って読んでみたい。