シ-ツ

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感想: ピープルウエア

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デッドラインと同じ感覚で読めるかと思ったが妙に長く感じた。本の長さ自体は極端に変わらないはず…。

デッドラインと異なって物語調ではなく、39章からなるTips(?)から構成される。

人材は交換可能な部品ではない、ソフトウェア開発は製造現場での考え方はなじまない、メソドロジー(方法論)は愚かであるなど、SESの現場とは真反対の考え方が並ぶ。 しかし現在のWEB系企業ならこれらを実践できているというとそうでもなさそう。主に退職に関するあたりは思うところがある。

この本では退職は明らかに無駄な出費であると述べている。退職によって無用な人材補充コストがかかり、生産性が一時的に低下し、企業が社員への投資(教育)を行わなくなる等。 特に教育に関しては(自分の数少ない企業経験上だが)納得感が強かった。自分の1社目は終身雇用の空気が比較的強く、新卒入社ということもあり手厚く教育を受けた。一方で退職も少なくはなく、また下請けの方に対して色々教えてもすぐに人が変わってしまうため「教育にかけた時間が無駄になっちゃったなぁ…」と思うこともあった。*1

2社目は3年ぐらいで人が入れ替わる小規模な会社だったため、企業としての教育自体はあまりなく、自己学習もしくは他の方から指摘されて学ぶというスタイルだった。3‐4年ぐらいで人が入れ替わってしまう業界でどれだけ教育にコストをかけられるかというのは難しい話だと思う。

そして今後自分が特に意識したいと感じたのは「変化」に関する話。

変化を自分が起こそうとしているとき、変化によって過去の知識が使えなくなる人からは反発を受け、変化によって利益を得る予定の人からは少ない支援しか得られないという。そして変化に対する反発は大抵論理的なものではなく情緒的なものであるということ。

自分が過去に(小さくても)変化を起こす側だったときを思い出すと確かにそうだったし、自分が変化を受け入れる側だったときも、変化を起こそうとしている人をちゃんと支援できていなかったと思う。*2

また、変化によって「元の状況」から「新しい状況」にまっすぐに行くのではなく、間に「混乱した状況」があり、「混乱した状況」を「新しい状況」だと誤認しない・させないこと、というのはとても納得感があった。

全体的にとても良い本であるし、エンジニアレベル・中間マネージャーレベルでも役立つ話は多いのだが、「オフィスへの投資」「組織全体の学習能力」など、今の自分じゃどうにもならないと思ってしまう部分もある。「そういやピープルウエアにはこんなこと書いてあったな」と将来の自分の引っ掛かりになってくれると嬉しい。

*1:転職している自分が言えることではないのだが

*2:セカンドペンギンとかの話がこれに当てはまりそう